山辺の木構造 まとめ |
山辺先生の構造 2日分をまとめました。
格言的なフレーズ
・建築基準法は、最低限の基準にすぎない。
・力の流れを読むことがすべての基本。
・設計者は伏図と軸組図を描くこと。
・構造の感覚を磨くには、多くのものを見ること。
・構造は、法律に拘束された部分より、設計者の判断で左右される面が大きい。
・木造住宅地震被害の傾向として、まず圧倒的に1階が被害を受ける。
日本の地震の歴史と基準改正
・1891濃尾地震 後
日本に筋交いが持ち込まれる(トラス)
接合部には金物を用いるなど
・1948福井地震 後
建築基準法
・1978宮城沖地震 後
新耐震設計基準
層間変形角の目安が1/60から1/120に。
・1995兵庫県南部地震 後
木造二階建て住宅の簡易計算法
四分割法 耐力壁の釣り合いの良い配置
N値計算法 柱、筋交い、土台、梁の接合部緊結法
品確法ができ 耐震等級など性能設計ができるようになった。
構造の基本
・木造住宅の基本構成は、軸組、鉛直構面、水平構面の三つ。
・木造二階建て住宅の簡易計算法では、次の3つが求められる。
壁量の確保(壁量計算)
壁配置のバランス(四分割法)
柱頭、柱脚の接合方法(N値計算法)
・さらに設計者は、次の検討をすべき。
基礎の仕様検討
鉛直荷重の支持能力確保
水平構面の先行破壊防止
・品確法の耐震等級1は、中小地震でも中破程度にとどめて、補修して住み続けることを
想定して作られた。さらにその上の等級3まで、メニューが用意されたということ。
・耐震等級1は建築基準法レベルとイコールでない。違いを把握すること。
地盤・基礎関係
・日本には、世界にたった10数枚しかないプレートのうちの4枚がある。
東京の下は北米プレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートの3層構造。
・周期1から2秒の地震波が、木造住宅にとってのキラーパルス。
・軟弱地盤上での設計の際、揺れが増幅される場合があるので、壁量に余裕を持たせるべき。
・切土、盛り土の混在地盤は特に注意が必要。
・地盤調査方法はSSがよい。表面波探査はデータの読取解析が専門家でないとできない。
・SSを元に地層概念図を書き起こすとわかりやすい。
・土の中のことなので、計算式がすべてではない。沈下量など設計者の目で判断が必要。
・基礎の役割は、鉛直・水平荷重を地盤に伝達すること。もう一つは、不同沈下を防ぐこと。
・必要に応じリブ(地中梁)を設けるとよい。
材料の話
・木材の異方性には、十分注意。繊維方向と繊維直行方向で、10倍くらい違う。
土台や梁のめり込みなど。
・スギ材、内部に水分が多く、人工乾燥による内部割れが発生しやすい。
内部割れはほぞなどの強度低下要因。
ヒノキ材は外側に水分が多い。その点でスギより有利なデータ。
柱の話
・土台への柱のめり込みは、材中間部より、材端部が不利になる。
・柱の役割は、鉛直荷重の支持はもちろん、耐力壁に作用する力に対抗する。
また、風圧力による変形を防ぐ。
・四方差しの通し柱は弱い。断面が欠損する。1/60程度で壊れる。
SI住宅の、建物中心の柱、相当な荷重がかかるので注意が必要。仕口の、めりこみ。
・背割りや干割れは、構造耐力上の影響はほとんどないことが、実験で分かっている。
貫通割れはNGだが、ほとんど事例はない。
梁の話
・梁の役割も、柱とほぼ同じ。中でも、鉛直荷重に対しては、たわみの検討が重要。
・梁は、長期曲げ・長期せん断・使用者にとってのたわみ・仕口のせん断耐力できまる。
・梁のクリープを考慮する。変形増大係数2。
・特に、梁に梁がかかる2次梁、さらに2次梁にかかる3次梁はたわみ量増える。
変形制限はスパンの1/250とされているが、各自ゆとりをもって設計するべき。
・梁の負担幅を意識した架構を心掛ける。
・仕口のめり込み耐力に注意が必要。特に梁せいを統一するような場合、大入れの受けの厚み(女木側のこと)はよく検討。
30㎜しかないとズボっと落ちる。60㎜あれば。
どうしてもという時は金物工法を使うなど。
・梁端部の荷重は1.5間負担幅910で400kg、2間負担幅910で700kgくらい。
大入れの受けが60mmくらいあると、1000kgまでOK。
・梁 たわみの基準は最低限のもの。ルールを守れていれば万全、ソフトの計算上成り立てば万全ということではない。
力の流れを読んで、設計者として判断が重要。
・荷重は各階で処理するのが、本来の構造。木造もぜひそうなるべき。
・継ぎ手の位置。耐力壁の中に継ぎ手を入れない。筋交い下の土台も×。
・風圧力のチェック 特に吹き抜け部分などは柱の断面・梁の断面寸法検討
・山辺先生のスパン表の見方 負担幅とスパンで見る。
耐力壁の話
・地震力は床面積に比例、風圧力は見附面積に比例。
・細長い家は、地震力より風圧力で構造が決まる場合があるので注意。
・ダイライトやモイスなど新建材の耐力はぎりぎりの設計。余力をもって設計すること。
・筋交いは、層間変形角1/30で座屈破壊する。
・特定行政庁の指定する軟弱地盤は壁量を1.5割増しにする決まりがあるが、実際には(それをしてしまうと土地相場に大きく影響するので)、日本中どこも適用されていない。
軟弱地盤上では揺れが増幅されるので、ゆとりある設計を。
・品確法と建築基準法の差異をしっかり理解すること。
品確法の方が詳細な規定になっている。
古い基準と新基準のダブルスタンダードになっている木造住宅の現状。
品確法、2階セットバック時には、1階壁量少なくて済む。
旧基準4号特例は、地震被害や裁判例が多い。
・壁量は、簡易計算法の場合、1~5倍。詳細法に依る場合は、7倍まで設定あり。
・壁倍率の意味、どこの教材にもあまり書いていない。
1倍⇒壁の上部変形が1/120の時の耐力が、1mあたり1.96kN(約200kg)となる壁。
・筋交いは応力が1点に集中するので、端部の施工に注意する。
大きな節などがあるとそこで座屈しやすい。
・面材耐力壁は指定されたファスナー(釘等)を用いること。
・新建材は靭性に乏しいので脆性破壊しやすい。ねばりがない。
接合部の話
・梁の継手、鎌継ぎでは耐風上不十分、水平力を受けても外れないよう、プレートで緊結。
・梁端部、仕口の切り欠きは材せいの1/3以内。
・許容応力度計算の場合の注意点
ソフトの矛盾点に気が付く目を持つ。継ぎ手の配置にも注意。
計算上引き抜きが発生していない、あるいはマイナスの場所にも金物は入れるべき。
・継ぎ手の曲げは耐力ないのでNG。
水平構面の話
・床倍率が重要。
・水平構面の重要性。2階だけでなくR階の梁も大事。
・基本的な考え方は、壁倍率とまったく同じ。
・壁量計算を皆一生懸命やるが、水平構面の剛床仮定の成立が前提。
・吹き抜けや階段室で穴だらけになる場合は、十分な検討が必要。
・左右に分断されるような場合は、左右ゾーニングして考える。
・耐力壁間距離が離れるほど、地震や風に抵抗できるように、強い水平構面が求められる。
・床倍率リストについて
・床合板の向きに注意。たわみ防止のため梁と直行方向に施工する。
・登り梁工法の際には、棟梁がたわみやすいので、梁せいを大きくする。
・ポイントとして、棟梁の変形、登り梁の変形、屋根面の水平剛性の3点をおさえておく。
・溶け残った雪や風圧力は、非対称荷重。
・木造ドミノ 床の設計難しい(耐力壁間距離が遠いので、強い剛性が求められる)
梁端部のめり込みにより、開発当初はトラブル事例もあり。
・壁は大臣認定が必要。床倍率は個別の実験でもよい。
実際の計算 4分割法・N値計算法
・筋交いの補正値について。圧縮は引っ張りより強い(荷重変形曲線より)
・筋交いは圧縮2.5倍、引っ張り1.5倍
・壁量計算は平均倍率(2.0倍)でOKだが、N値計算の際は、圧縮引っ張りそれぞれの
補正値を用いる。
・引き抜き力マイナス値部位にも金物設置を推奨。